「AIでシステム開発/アプリ開発やっています」と聞いたとき、どんな印象を持ちましたでしょうか?

「AIに適当に作らせているだけでは?」「品質は大丈夫?」「何かトラブルがあったとき、説明できるの?」――そうした不安を感じた方は、決して少数派ではありません。

Claude Codeによってもはや開発者がエンジニアであるかどうかなど誰も気にしなくなったと思います。
ただ、システム開発は別です。システム開発は発注者の資産です。
実際、システムを発注する際に「依頼する人あるいは会社がエンジニアとしてのスキルを持っているか」はとても気にする部分だと思います。依頼した人が実はバイブコーディング、つまり「ノリと感覚で作ってました」というのはとても怖い話です。

私が実践するAI駆動開発は、よく混同されるバイブコーディングとはまったく異なるアプローチです。

近年、AIを使ったコード生成が急速に普及するなかで、「バイブコーディング」と呼ばれる開発スタイルが話題になっています。私はこの手法を採用していません。この記事では、その違いと、なぜそれが重要なのかをご説明します。


バイブコーディングとは、またその懸念点

バイブコーディング(Vibe Coding)とは、「ノリと感覚(vibe)」でAIに指示を出し、生成されたコードをほぼそのまま採用していく開発スタイルです。ChatGPTやClaude、GitHub Copilotなどのツールに「こんな機能を作って」と投げかけ、出てきたコードを動けばOKとする――そういったイメージです。

手軽さという点では魅力的に映りますが、システム開発の現場では深刻な問題をはらんでいます。

  1. 誰もコードを理解していない

AIが生成したコードは、一見それらしく動いても、内部のロジックを誰も把握していない状態になりがちです。「なぜこう動くのか」を説明できないまま本番環境に乗ります。

2. セキュリティリスクの見落とし

脆弱性はコードの細部に潜みます。「動いているように見える」だけでは、個人情報漏洩やシステム不正アクセスのリスクを見落とします。実際、AIが共同生成したコードは人間が書いたコードと比較して脆弱性が約2.74倍多いという報告もあります。バイブコーディングでは、このチェックが抜け落ちやすい。

3. 保守できないシステムが生まれる

仕様変更や機能追加が必要になったとき、誰も構造を理解していないコードは手がつけられません。「直そうとしたら別の箇所が壊れた」が連鎖するシステムの出来上がりです。

4. 発注者への説明責任が果たせない

「AIが書いたから」は、責任の言葉になりません。なぜこの設計にしたのか、なぜこの実装を選んだのか――エンジニアが根拠を持って説明できなければ、発注者との信頼関係は成り立ちません。

5. 技術的負債が積み上がる

場当たり的な生成の積み重ねは、中長期的にシステムを蝕みます。「一時的に動けばいい」が続いた結果、数年後に全面作り直しを余儀なくされた事例は少なくありません。

参考:バイブコーディングの本当のリスク|トレンドマイクロ


AI駆動開発とは何か

AI駆動開発とは、エンジニアがAIを「ツール」として主体的にコントロールしながら進める開発手法です。

つまり、重要なのは主語です。主体はエンジニアであり、AIはその道具である

具体的には、要件定義も、システム設計も、技術選定も、人間のエンジニアが判断します。AIはその判断をもとにコードの草案を生成したり、選択肢を提示したりするサポーターとして機能します。生成されたコードは必ずエンジニアがレビューし、テストを通し、品質を確認してから採用します。

また、AIに対してどのような指示(プロンプト)を出すか自体が、エンジニアリングスキルです。的確な文脈と制約をAIに与えることで、より良いアウトプットを引き出す――これはドキュメントを書く力、設計を言語化する力と直結しています。

詳しくはこちら:AIの部下を持つ方法|Claude Codeで実現する組織設計


バイブコーディングとAI駆動開発の違い

端的に言えば、こうなります。

バイブコーディング:AIが運転席、人間は補助輪 AI駆動開発   :エンジニアが運転席、AIは優秀な助手席

どちらもAIを使っています。しかし、誰がハンドルを握っているかがまったく違う。

具体的な違いを並べると、以下のようになります。

比較軸バイブコーディングAI駆動開発
設計フェーズなし〜最小限従来通り実施(AI補助)
コードレビューなし〜形式的必須・厳格
テスト省略されがち自動テスト含め実施
ドキュメント生成まかせエンジニアが責任を持つ
エラー対応AIに再生成させる原因を理解して修正する
発注者への説明困難設計根拠を説明できる

バイブコーディングは「AIに作らせる」開発です。一方で、AI駆動開発は「AIと一緒に作る」開発です。この差は、完成したシステムの品質と、その後の保守性に如実に現れます。


AI駆動開発によって何が可能になるか

AI駆動開発は、従来の開発プロセスの厳格さを守りながら、AIが持つ生産性を取り込みます。これによって実現するのは「スピードか品質か」のトレードオフではなく、その両立です。

スピードと品質の両立

たとえば、定型的なコード生成や繰り返し作業はAIが担います。その分、エンジニアは設計の判断や品質の検証に集中できる。結果として、速く、かつ品質の高い開発が可能になります。

コストの最適化

また、エンジニアの工数を、AIでは代替できない「判断」と「責任」に向けることができます。発注者が支払うコストが、より本質的な価値に対して使われるようになります。

説明できるシステムを届ける

さらに、仕様・設計・コードのすべてについて、エンジニアが根拠を持っています。「なぜこう作ったのか」を説明できるということは、変更・拡張にも強いということです。数年後に「誰もわからなくなった」が起きないシステムを、私たちは提供します。


AIを使うこと自体は、もはや特別なことではありません。重要なのは、どのように使うかです。

だからこそ、私たちがAI駆動開発にこだわるのは、発注者に対して責任を持ったシステム開発を届けたいからです。バイブコーディングが広まるなかで、「AIを使っているのに、ちゃんとしている」ではなく「AIを正しく使っているから、ちゃんとしている」という開発会社でありたいと考えています。

ご不明な点やご相談は、お気軽にお問い合わせください。

下野(しもの)

下野(しもの)

SumFlat株式会社

中小企業のAI活用と業務システム開発を専門とする。「現場に根ざした伴走」をモットーに、難しい技術を使わず業務が改善できる仕組みづくりを支援している。